写真や映像の世界で見る砂漠は、まさに「美しい」のひと言といっていいでしょう。『アラビアのロレンス』という映画では、70ミリというとんでもなく大きなスクリーンに映し出される広大な砂漠に圧倒されます。この映画のなかでは全編を通して砂漠が背景になっているといって過言ではありません。砂漠での初めのところで、ロレンスの案内人が井戸の水を無断で飲んだために射殺されますが、そのときに砂漠のなかから登場するのがオマー・シャリフ演じるアリ。砂漠での過酷な生き様をいきなり見せつけられますが、美しさと過酷さが入り混じった、その後の展開を示唆しているかのようです。
実際にはサラサラで美しい砂の砂漠より、岩石に覆われた荒涼な地域がほとんどで、砂に覆われた美しい砂漠は全体の2割程度にすぎません。それは『アラビアのロレンス』のなかで、アカバ攻撃に向かうために横断する砂漠のシーンによく描かれています。それでもロレンスに率いられたアカバ攻撃部隊を空撮したシーンなどは、もう言葉にできないほど圧倒的な美しさといっていいでしょう。
同じく映画では『アメリカンスナイパー』にも砂漠のシーンが登場しますが、そこに見る砂漠はまさに荒涼とした世界です。
その他には西部劇にもよく砂漠のシーンが登場します。砂漠のなかを行く幌馬車隊。サボテンがまばらに生えた砂漠での銃撃シーン。また日本映画でも『敦煌』には砂漠が映し出されています。実際に砂漠に行ったことはなくても、たいていの人は映画で砂漠を知っていることでしょう。
日本国内では鳥取砂丘がよく知られていて、規模は小さいながらこれも砂漠と呼んでもいいかもしれません。童謡「月の沙漠」は千葉県の御宿海岸がモチーフになっているといわれていますが、諸説があり定かではありません。日本人には直接的にはなじみの薄い砂漠ですが、その幻想的な風景はきっと憧れの世界なのかもしれません。ラクダの背に揺られて砂漠を旅する。いつか実現したい夢ではないでしょうか。
文:有澤 隆