Art & Story

デジカメ時代でもモノクロ写真が愛される理由

モノクロ写真のよさを、改めて見直してみてはいかがでしょうか

ジタルカメラの進化のおかげで、モノクロ(白黒)写真が誰でも簡単に写せるようになってきました。写真はもともとモノクロから始まったのですが、カメラが普及してきたのはライカカメラで知られるライツ社の技術者オスカー・バルナックが35ミリフィルムを使用するカメラを1910~20年代に設計したのが始まりといわれています。とはいえ、カメラはなかなか高価だったことと、写真撮影には高度な技術が必要だったことなどもあり、誰もが手軽にカメラを手にして写真を楽しめるようになったのは1960年代以降です。

その後、さまざまな変遷を経て現在のようなデジタルカメラの時代となったわけですが、面白いのはほとんどのデジタルカメラにモノクロモードが付いていることでしょう。「写真は光と影」といわれますが、カラー写真が普及し、さらにはデジタルカメラの登場によっていつの間にか写真は鮮明さが重視されてきました。それがなぜ今、モノクロに再び脚光が当てられるようになったのでしょうか。
ひとつには有名な写真家が残した作品にモノクロ写真が多いことがあるのかもしれません。カラー写真が普及してからもモノクロ写真を作品として残していることが多いようです。

さらには有名なモノクロ写真には、なぜか風景などよりも人物を撮影したものが多いように思われます。パリの路上でおもむろにキスをしている男女を撮ったフランスの写真家ロベール・ドアノー、報道写真など決定的瞬間を多く捉えたアンリ・カルティエ・ブレッソン、水俣の写真で有名なユージン・スミス……。
モノクロ写真が愛される理由は、もしかしたら古い記憶や夢にはモノクロが多いということとも関係しているのかもしれませんね。モノクロ写真のよさを、改めて見直してみてはいかがでしょうか。

 

文:有澤 隆

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